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SpotifyとNMLでクラシック音楽 その8 日本のオーケストラと日本人作品

レコード・CDでもある話なのですが、配信サイトで曲の収録順序が間違って登録されていることがあります。これ、クラシック音楽では特に痛恨のミス。なぜかというと、クラシック音楽の楽曲は第1楽章、第2楽章と楽章制で構成されていることが多いためです。

酷いものは4楽章の曲で、いきなり第4楽章がアタマに登録されているのを見かけたことがあります。さらに配信で恐ろしいのは、この手違いが聴いたことのない曲・珍しい曲で起きていたとしたら、リスナーもよく調べず「そういう曲なんだ」と思って終わりになる可能性が高いことですよ。怖い怖い。

そもそもマーラーの交響曲第6番のように、作品の成立過程や指揮者の選択によって楽章の順番が重要になる厄介な曲もあります(レコード会社が収録順に手を加えている場合も、あるんだなこれが)。こうなるともう、「どの順番がオリジナルなんだ?」と初出盤や記録の探索になって⋯ああ、そうやって業界のバランスを保っているんですね。違うか。

そんな音源もまだ眠っているかもしれないお品書き:

日本のオーケストラによる演奏

日本のプロ・オーケストラにはそれなりに親しんできたつもりだ。今でも各オーケストラの年間スケジュールを見て、適宜演奏会に通っている。特に演奏頻度の少ない楽曲は古今東西問わず気になる。楽曲目当てで聴くことが多いせいなのか、最近のオーケストラの技量に関して外国のオーケストラと比較してどうこう、というのはあまり気にならない。ただ、通い詰めるとオーケストラの疲労度みたいなのは顕著にわかってくる。

だが自宅で、音源で聴くとなると真っ先にチョイスするまでは⋯というのが私にとっての日本のオーケストラ、だろうか。日本のオーケストラの演奏が多い、日本人作品の音源を躊躇なく購入しているとは思っているものの、である。

正直に言えば、これまで日本のオーケストラによる演奏は国内盤による発売が多く、値段で興味を失うことが少なくなかった。フルプライスで2千円~3千円で発売されている国内盤を買うなら、同じ予算で2枚、中古価格なら5~10枚(あるいはそれ以上)は買える外国の演奏団体・演奏家による輸入盤のCDやレコードを漁るというものだ。

だが、配信サイトがここまで便利になった今、敢えて興味・関心を抱いて楽しむチャンスなのではないだろうか。まだまだ配信数は少ないものの、注目すべき音源が無料・全曲楽しめるというのは嬉しい。


準・メルクルとNHK交響楽団のシューマン交響曲全集は、Spotifyで聴いてハマった演奏のひとつ。交響曲第4番(初稿)の爽やかなこと! N響が、日本のオケがなんて全く気にならない。今更こんなことを書いているのが気恥ずかしいくらい。

晩年の朝比奈隆、という色眼鏡で敬遠していた大阪フィルとのベートーヴェンの交響曲全集。全曲無料の今こそと思い聴いてみたら、交響曲第1、2番そして第7番の躍動感に感動。それでいて8番がこんなに悠然とした音楽になるとは。やはり聴いてみなければわからないものだ。

マーラーとショスタコーヴィチ、どちらもイケるインバルと東京都交響楽団の録音も聴き逃せない。マーラーの交響曲第10番は唸り声が少し気になるが、オケの醸し出す寂寥感は良い。

有名な演奏家・指揮者を招く割に珍しい曲もガンガン採り上げてくれる読売日本交響楽団は、Spotifyではアルブレヒトの音源が人気のようだ。実際に聴いてみると、『アルルの女』がキレッキレで面白い演奏。読響は金管が余裕ある響きで上手い。

日本人作曲家の音楽・新しい録音より

配信サイトでは、つい「この録音はあるかな?」と古い音源探しをしてしまうのだが、新譜も侮れない。今回は新しい録音から、日本人作曲家の作品の話を少々。


佐渡裕の芥川也寸志! 以前から採り上げていた『トリプティーク』がついに録音。第1楽章の勢いもさることながら、トーンキュンストラー管の透き通った響きがマッチした第2楽章の素晴らしいこと。『トリプティーク』のあとに収録のレスピーギもニクい構成。
芥川作品はもっと録音されてほしいなあ。いい加減、交響曲第1番をプロオケに新録して欲しい。

ちなみにSpotifyでは同コンビのショスタコーヴィチが既に聴けます(国内盤は来月発売予定)。CDの発売を待ってる時代じゃないんだなぁ。


気鋭のバッティストーニと東京フィルハーモニー交響楽団の録音も無料から聴けまっせ。伊福部昭の『シンフォニア・タプカーラ』をセッション録音で併録という、並々ならぬ意欲を感じるシリーズ。今月発売されたばかりなのに、この配信の早さ。CD買う前に全曲試聴もアリではないか。買って後悔は、もはや時代遅れ。

その『タプカーラ』は破綻のない第1楽章がクリアな録音と相まって、聴かせる。第2楽章は素朴さよりも、凛とした美しさが際立っていてハッとする演奏。そして第3楽章はあの独特な節回しが強調されていて絶品。快速な乱痴気騒ぎだけが第3楽章の魅力ではないのだなあ。ただ、第3楽章はほんの少しだけオケが息切れしている感があるかな? 勢いに任せた、という感じだろうか。

とまあ、まだまだ興味深い音源が増えてきそうな勢いなので、今後も紹介していきたい。マニアックを自認する御仁にこそ、こういう正規の配信はガンガン利用してもらいたい所存。


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