デジタルエンタテイメント断片情報誌

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”エピソード”で食べる・作る料理本

料理の話は何となく躊躇していたのだが、こんな節操なく記事を並べて何を今更、と思い直した。

料理をするために本を買う⋯というのは少なくなった。作りたい料理を立ち読みでザッとさらって、あるいはネットで調べて、が多い。同じ料理でも調味料や手順が簡便なものを選ぶ傾向にある。その割に、分量は守るタチだ。作っている途中に失念し慌てて確認、ということもある。

昔、定期的に読んでいたブログに「今日は自炊」なんて一文が出てきて、「ほほう」と思い読み進めたら、レトルトのカレーを温めて食べただけで衝撃を受けたことがある。いや、もちろん否定はしませんよ。ただまあ、そうね、自炊ね、うん⋯みたいな。

今回は少なくとも”料理”はしている、と言える本の話だと思う。読書のカテゴリでネタにするのだから、料理のレシピである以上に、読み物として興味を引くもの・手元においておきたくなるものを。


というわけで、『闘魂レシピ』(著:アントニオ猪木 飛鳥新社)の紹介である。

闘魂レシピ

闘魂レシピ

いかにも男の料理話、というシンプルなレシピから、ブラジル料理のような珍しくて材料の入手と手順に手間がかかるレシピもあって、一筋縄ではいかない。

私がこの本を参考によく作っているのは「きんぴらごぼう」。ニンジンは入れず、ごぼうを麻雀の点棒くらいの太さ・長さに切って牛肉と炒めるもの。あまり巷で見かけないレシピかと思う。調味料は本に掲載の分量で間違いないはず。歯が丈夫なら、歯ごたえ・食感でご飯がすすむレシピである。

この本の最大の特徴だが、アントニオ猪木が書いたということに尽きると思う。これは月並みな話ではない。各料理のレシピに入る前のエピソード・ゴタクがとにかく面白いのだ。幼少期からブラジル時代のこと、プロレスのこと、自らの凝りよう⋯各料理の魅力を筆者の個性で増強している。これが食欲になり、料理をする意欲になる本である。
そんな本だから、当然読むだけでも面白い。大体、資格がないと作れない料理も掲載されている。実際に作らなくても面白い料理本も、あるものだ。

この本が面白くて、著者に興味を持ったら、『アントニオ猪木自伝』(新潮文庫)もお薦めしたい。プロレスに興味がなくとも、時代を築いた日本のエンターテイナーを知る上で読んで損はないし、芸能人の自伝としてはかなり面白い部類だと思う。事実は小説より、いや事実でなくともこれだけ痛快なら読み物として満足である。


そういえば”オカダ・カズチカと三森すずこ交際”のニュースが飛び込んだとき、この字面を見て『自伝』を思い出した。アントニオ猪木が倍賞美津子と婚約発表した時のことである。以下引用:

 週刊誌の見出しに「倍賞美津子とアントニオ猪木が結婚」と書かれていた。「アントニオ猪木と倍賞美津子」ではなかった。プロレスはやっぱりマイナーなんだな⋯⋯と思ったのを覚えている。当時の倍賞美津子は、まだそれほどのスター女優ではなかったのだから。
(『アントニオ猪木自伝』 新潮文庫 P.148)

今回の報道もまた、知名度優先なのか、スポーツ・芸能諸々のいわゆる”格”による扱いなのか。


それはともかく、一連の報道でレスラーを目指す悲壮な決意をされた御仁がいたら、まずは『闘魂レシピ』にも載っているニンジンジュース常飲から始めては如何。

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