デジタルエンタテイメント断片情報誌

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指揮:山田一雄に期待して・・・

没後20周年(2011)・生誕100周年(2012)を迎えて以来、指揮者・山田一雄の自作の再演や過去に指揮した演奏の発売が比較的長期間続いている。かなり嬉しい状況だ。

山田一雄の実演に触れたことは、残念ながら、ない。私がクラシック音楽、日本人作曲家の音楽に興味を持ち始めた頃には既に亡くなっていた。生前の山田一雄について朧げに記憶しているのは、NHKでやっていた晩年のドキュメンタリー(収録されたDVDも発売されている)を観て、日本にもこんな破天荒な指揮者がいるんだなと思ったことくらいである。

各メディアによる特集や、実演に触れた人の話では「熱い」「炎のような」指揮ぶりで大変人気を博したようで、話を聞く度に生で聴きたかったと心の底から羨む指揮者の一人だ。語る人の鼻息も荒いので、余程凄かったのだろう。実際、その凄さの一端を垣間見ることができる録音が、少しだけ残されてる。そんな指揮者の録音が新たに発売となれば、否が応でも期待して購入してしまうのだが⋯。

これが思ったより「アタリ」と感じる録音が少ない。実演でもオーケストラとの相性や好不調の波が激しかったと聞くが、聴いてみて紹介したくなるような録音が、なかなか発売されない。正直、「もっと良い録音残ってないの〜?」と制作側にねだりたくなる。

今回は敢えてそんな"ハズレ"のCDを紹介しておこうと思う。東武レコーディングズのCDで、とりわけブラームスの交響曲第1番収録ということで大いに期待した録音。まずこのブラ1の録音、オケの状態も思ったより普通だし、解釈も散漫で、イマイチ噛み合っていない様子に落胆した。しかも第1楽章〜第3楽章までこの調子で、せめて終楽章だけでも聴きどころを、と望みを託していると今度は第1主題でオケが空中分解してしまうという⋯。この箇所でこんなにハッキリ崩壊している録音は、ある意味珍しいかもしれない。

ちなみにこの録音と対照的なブラ1が、ペーター・マークの指揮した録音。オケの状態も良く、マークの解釈がさらに美しい音色を引き出していて感服した。決して山田一雄を貶めるためにこのCDを紹介しているわけではない。きっと山田一雄にもこういう素晴らしい録音が残っているはず⋯という期待を込めて。


さらに念のため、アタリだと思った録音の話もしておこう。マーラーの交響曲第9番。発売当初、この指揮者で聴きたいと思った曲の発売にテンションが上がったが、演奏内容も大変素晴らしかった。演奏時間の長さ(2枚組)を感じさせず、所謂「情念」だけで終わらせない、マーラーの音楽を俯瞰した解釈の光る演奏。やはり山田一雄の指揮するマーラーって凄かったんだな、と実感した。マーラー好きに聴いておいてもらいたいし、聴いた感想を知りたくなるCD。こういうCDのリリースを今後も期待したい。


(2018/10追記)
チャイコフスキー交響曲第5番の録音について書いた記事はこちら:

(2019/8追記)
ベートーヴェンの交響曲の録音について書いた記事はこちら:

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