デジタルエンタテイメント断片情報誌

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今年の暮れはショスタコーヴィチ交響曲第7番

既に今年は仕事納めをしており、悠々と年末モードに入ったのだが、かねてから楽しみにしていた演奏会に行ってきた。今年最後のコンサートは交響楽団CTKの第2回演奏会(2015/12/26・横浜みなとみらい大ホール)。17:20開場、18:00開演なので昼間の買い物がてら。

(曲目)
ショスタコーヴィチ
映画音楽「五日五夜」作品111(日本初演)
交響曲第7番 ハ長調 作品60


指揮:佐藤雄一 演奏:交響楽団CTK

元々この時期にショスタコーヴィチ交響曲第7番と、珍しい映画音楽「五日五夜」をやるということで注目していた。演奏会の曲目は随分前から決まっていたが、ショスタコーヴィチ交響曲第7番は12/20に放送されたNHKの「新・映像の世紀 第3集」でも取り上げられただけに、思わぬタイムリーな注目を浴びていたかもしれない。

毎回テーマを決めた演奏会を開くオーケストラとのことで、「今年のテーマは「戦争」という大きなくくりの中に「勝利」、「歓喜」という表向きのもの、そしてそれとは裏腹な「寂寥」、「追憶」が併存していると言えるでしょう」(パンフレットより引用)と、なかなか意欲的なところが当日さらに好印象だった。私がアマチュアオーケストラを聴きに行く大きな理由の一つは「演奏を聴く機会が少ない珍しい曲をやること」なのだが、ただ珍しいから取り上げる、というだけではやはり寂しい。


「五日五夜」はどういう曲か知っていれば、この時期に演奏されるとくれば思わずニヤリとするものだ。曲目を見て、真っ先にオーケストラ・ダスビダーニャの演奏会歴を見たりしたが、そういえば日本の演奏会で取り上げられていなかったか。

演奏会での演奏頻度はともかく、録音は探せば比較的入手しやすいかと思う。ナクソス(NML)でも聴ける。普段はあまり演奏会前に予習しないのだが、珍しい機会なので前日に手元の録音を聴き直した。CHANDOSがショスタコーヴィチ生誕100年の頃に発売した、気合が入った録音(こういうのを日本の作曲家でやってくれないかなあ)。ちなみに録音について、私はエミン・ハチャトゥリアンが指揮したレコード以外は所持しているはず。曲の珍しさ、面白さ、入手しやすさが揃った”程良い”マニア向け作品と言える。

Film Music of Dmitri Shostakovich

Film Music of Dmitri Shostakovich

さて「五日五夜」の感想だが、オーケストラの各パートの演奏が目立つ曲であり、少々苦しい箇所もあったが、全体としてはショスタコーヴィチの音楽に必要な音の振幅(大きく・小さく、早く・遅く)に食らいついた、良い演奏だったと思う。特に第1曲の「序奏」でスネアが加わる所や、「終曲」でもそれがよくキマっていた。木管楽器やハープの音色が曲の美しさを損ねていなかったのも○。「ああ交響曲第11番だなあ」、「12番だなあ」と音楽のネタにも浸ることができた。第3曲で、あの「引用」が始まる前に拍手のフライングが入ったが、思わず「盛り上がりはこれからですぜ」などと思ってしまった。ちなみにオーケストラは古典配置を採用。

メインの交響曲第7番も今更言うことはないのだが、前述の通りタイムリーな曲であること、しかも「五日五夜」と一緒に聴ける機会はそうそうない。ベートーヴェンマーラーブラームスも好きだが、特にこの時期日本ではどうしてもベートーヴェンを意識してしまうだけに、こういう曲目が聴けることは素直に嬉しい。

その交響曲第7番もオーケストラの技術的な見せ場が多く、第1楽章、第2楽章あたりは苦戦している様子だった。故に第1楽章は噛み締めるようなテンポだったが、それでも疵が出てしまった印象。第3楽章、第4楽章は意欲的な表現。音の強弱やテンポの設定が、技術に怯まない熱意を感じる演奏で一体感を生み出しており、大変引き込まれた。これなら聴きに行ったかいがある。

来年はマーラー交響曲第6番をやるそうで、今後どんな大曲・選曲を演奏するのか注目しておこうと思う。

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